脳の計算理論川人 光男
発売日 1996/03
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最先端を突っ走る著者による体系的入門書
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脳の計算理論とは何か? 「計算論的神経科学」を掲げる著者は序章でこんなふうに語っている。
例えば、脳のある部位の神経回路の結線がかなりきちんと明らかにされたならば、その部位の機能が自然にわかるだろうか。神経回路の結線はハードウェアに関する事実である。一方、機能とはどんな計算問題が解かれているかということであり計算理論の立場から明らかにしない限りわからない。ハードウェアと機能は理解のレベルが違うのである。
これが著者の研究動機、すなわち脳の計算理論の必要性である。本書は、その著者の考え方や研究の現在を語った、少し変わった教科書である。いわゆる教科書ほど固まっているわけではない。むしろ研究者の思考を学生の一人になって追っていくような気分になれる本である。簡単な本ではない。だが、非常に興奮する一冊である。
脳が行っていることが計算であるといっても、計算論的研究だけやっていても脳機能の解明には至らない。人間が持つ身体、ハードウェアの拘束条件があるからだ。その拘束条件を満たす計算理論を探索する必要があるからだ。
著者は脳機能を解明するために4つの段階の研究手法が必要だったと述べている。
四つの段階とは以下のとおり。
1)計算理論の研究。脳がどんな計算問題を解いているのか、入力と出力はなにか。基本原理は。
2)表現とアルゴリズムおよび神経回路モデルの研究
脳内での入力・出力、および中間段階の情報表現やアルゴリズム、それを実際に実現する神経回路モデル。またそれを使ったシミュレーションやロボット実装による検証。
3)心理実験、行動実験による計算理論の検証
4)生理実験による神経回路モデルの検証
この4つの研究段階を繰り返すことで、よりよい、現実に近い脳の計算理論の研究が行われている。著者らは主に小脳を研究対象にし、小脳が順モデル・逆モデルを学習していくモデルを、脳の認知的な高次機能にも拡張できるのではないかと考えており、そのへんの裏付けとなる考察や実験の話もまた面白い。