2004年08月10日

『共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人』(リチャード・E. シトーウィック/草思社)

共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人
リチャード・E. シトーウィック, Richard E. Cytowic, 山下 篤子

発売日 2002/04
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画像診断ばかりが能(脳?)じゃない
脳の驚くべき仕業、そして現実の万華鏡

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 以下の帯の惹句が、内容を的確に表現している。

ミントを食べると「円柱」を感じた。ポケベルが鳴ると「赤い色」が見えた。五感が入り混じる特異な人たちの脳のミステリー。

 形を味わい、色を聴く。音を聞くと色が見える。ものを食べると指先に形を感じる。これが「共感覚」の世界だ。「連想」ではない。「感じる」のだ。著者は開業医。たまたまマイケル・ワトソンという共感覚者に出会い、共感覚の世界にのめりこんでいく。そして共感覚の意味や、意識と情動など脳の不思議に踏み込んでいく。
 後半はやや牽強付会だが、共感覚の世界を描く前半は実に面白い。
(初出:メタローグ「recoreco」)
posted by 森山和道 at 00:57| Comment(1) | TrackBack(1) | 脳、身体、心、意識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年08月05日

『脳は美をいかに感じるか―ピカソやモネが見た世界』(セミール ゼキ/日本経済新聞社)

脳は美をいかに感じるか―ピカソやモネが見た世界
セミール ゼキ, Semir Zeki, 河内 十郎

発売日 2002/02
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読みやすさはピカいち、シロートでも大丈夫

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 ものを見る、視覚とはどういう過程か。著者はこう言う。「視覚は、この世界についての知識を得ることを可能にするために存在する」。

視覚とは世界をあるがままにただ単に見る受動的な過程ではない。レンズが捉えた像から世界に関する情報を獲得するための能動的な過程なのである。視覚システムは世界の普遍的な側面を絶え間なく抽出し続けている。画家は以前からこのことに気づいていた。なぜなら、美とは普遍的、完全なものの表象であり、芸術とはそれを追求する過程であるからだ。

 本書は、脳研究者の視点から、絵画の創作や観賞について考察したものである。優れた美術作品はなぜ強い主観的印象をもたらすのか。そのとき脳の中では何が起こっているのか。まだ分かってないことばかりなのだが、興味がある人ならば一読の価値はある。

(初出:メタローグ「recoreco」)
posted by 森山和道 at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 脳、身体、心、意識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年08月04日

『なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎』(ダニエル・L. シャクター/日本経済新聞社)

なぜ、「あれ」が思い出せなくなるのか―記憶と脳の7つの謎
ダニエル・L. シャクター, Daniel L. Schacter, 春日井 晶子

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思い込みについて謙虚にしてくれる本
人間の「記憶」はおもしろい
英語版と日本語版の表面的な比較

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 たとえば相手の職業は覚えていても、名前が思い出せないことはよくある。実は人名は、日常生活においてもっともど忘れしやすいものの一つなのだ。これはなぜか。理由は極めて単純で、職業のほうは多くの関連情報を持っているが、人名は単に個人を識別するだけでしかないからである。人間の脳のなかでは普通名詞と固有名詞がそれぞれ別のプロセスで記憶されているらしいことが、たとえば固有名詞だけを想起できなくなるといった特殊な失語症の症例からも明らかにされている。本書はその他、物忘れ・不注意・妨害・混乱・暗示・書き換え・つきまといの7つに分類される記憶エラーの特徴と、脳科学の成果を簡単に紹介していく。記憶のエラーは、むしろ適応能力の現れなのではないかと著者は言う。軽妙な文章でさっさと読める一冊。
(初出:メタローグ「recoreco」)
posted by 森山和道 at 22:31| Comment(1) | TrackBack(4) | 脳、身体、心、意識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年08月01日

『脳の計算理論』(川人光男/産業図書)

脳の計算理論
川人 光男

発売日 1996/03
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最先端を突っ走る著者による体系的入門書

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脳の計算理論とは何か? 「計算論的神経科学」を掲げる著者は序章でこんなふうに語っている。

例えば、脳のある部位の神経回路の結線がかなりきちんと明らかにされたならば、その部位の機能が自然にわかるだろうか。神経回路の結線はハードウェアに関する事実である。一方、機能とはどんな計算問題が解かれているかということであり計算理論の立場から明らかにしない限りわからない。ハードウェアと機能は理解のレベルが違うのである。

これが著者の研究動機、すなわち脳の計算理論の必要性である。本書は、その著者の考え方や研究の現在を語った、少し変わった教科書である。いわゆる教科書ほど固まっているわけではない。むしろ研究者の思考を学生の一人になって追っていくような気分になれる本である。簡単な本ではない。だが、非常に興奮する一冊である。

脳が行っていることが計算であるといっても、計算論的研究だけやっていても脳機能の解明には至らない。人間が持つ身体、ハードウェアの拘束条件があるからだ。その拘束条件を満たす計算理論を探索する必要があるからだ。

著者は脳機能を解明するために4つの段階の研究手法が必要だったと述べている。
四つの段階とは以下のとおり。

1)計算理論の研究。脳がどんな計算問題を解いているのか、入力と出力はなにか。基本原理は。

2)表現とアルゴリズムおよび神経回路モデルの研究
脳内での入力・出力、および中間段階の情報表現やアルゴリズム、それを実際に実現する神経回路モデル。またそれを使ったシミュレーションやロボット実装による検証。

3)心理実験、行動実験による計算理論の検証

4)生理実験による神経回路モデルの検証

この4つの研究段階を繰り返すことで、よりよい、現実に近い脳の計算理論の研究が行われている。著者らは主に小脳を研究対象にし、小脳が順モデル・逆モデルを学習していくモデルを、脳の認知的な高次機能にも拡張できるのではないかと考えており、そのへんの裏付けとなる考察や実験の話もまた面白い。
posted by 森山和道 at 01:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 脳、身体、心、意識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする