発明報酬―技術者が会社を訴える時岸 宣仁
発売日 2004/03
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(初出:『中央公論』2004年6月号)
二〇〇四年一月三〇日、東京地裁は高輝度青色LED(GaN系発光素子に関する特許)の特許権をめぐる通称「中村裁判」において、原告である中村修二氏の貢献度を五〇%、対価の総額を六〇四億円と算定し、中村氏が請求していた二〇〇億円全額の支払いを命じた。本書は、この裁判を中心に、発明報酬の今後のありようや、職務発明特許に対する考え方について、経済ジャーナリストが取材したものだ。
この出来事をめぐっては様々な書籍や記事があふれているが、この本は大きく前半と後半に分かれている。
前半の特徴は中村氏自身のインタビューや、裁判傍聴時の実際の模様が収録されていること。ところどころ文章が繰り返しになっていたり、もう片方の当事者である日亜化学側への取材が相対的に少ない点が気になるが、ジャーナリストならではの視点で生々しく語られる裁判の模様は面白い。こちらがこの本のメインだ。
後半は特許法改正の動きについて、日本知的財産協会、荒井・知財国家戦略フォーラム代表、中山信弘・東大法学部教授の見解や海外事例、ソニーや三菱化学など一部の国内企業の動向が収録されている。
結論としては、職務発明問題は研究者・技術者の独創性をどのように評価するかという問題であり、それは日本の産業競争力を左右するのだから軽視できない、とまとめられている。やや尻切れトンボの印象はあるが、この問題についてコンパクトに、かつ読み応えある内容になっている一冊だ。
特に東大・中山氏が、職務発明問題は日本の雇用形態の問題と不可分であると考えなければならないと指摘している点は重要だ。一人で数百億円を稼ぐスター技術者を生み出すということは、陰で食えずに消えていく技術者の存在を認めることにも繋がる。そのような厳しい環境を皆が本当に望んでいるのか。そもそも会社員は、ただ会社にいるだけで多くの他者に支えられている。いわゆる事務方がいて初めて技術者も仕事ができるのだ。彼らの立場はどうなるのか。そんな問題もある。
なお中村裁判に関しては、まだ係争中であり、事実関係が明らかになったとは言い難い状況だ。中村氏は自分一人で発明したと強く主張している。ところが日亜化学側に取材した『
青色発光ダイオード』(テーミス)では全く違う内容が書かれている。興味があればそちらにも目を通すことをすすめる。