はじめケチクサイ怒りでも、突っこんで考えると、もっと広い、底の方に問題があることに気がつく。見きわめれば見きわめるほど、怒りが深くなる。すると、怒りは、自分のスケールから離れて、豊かに、透明になるのだ。
本質的にぶつかり、明朗にたたきつぶそう。そういう、おおらかな、そして、ながい呼吸の聡明な憤りである。いつの間にか、今までのしかめっ面、せっかちにツリあがった眼ざしが、にっこり笑ってしまう。
窮極は、純粋に凝視する眼である。
まさに、そういう眼こそが現実を見すかし、現実の秘密を激しくえぐるのだ。
私は絵を描く。が、人に好かれる楽しい絵を描こうとは思わない。それよりも私は猛烈に叫びたい。絵のなかで。
憤り、叫びの表情、それが見る人に楽しまれるはずはない。抵抗を感じさせるだろう。むしろ、いやな感じ。−−特に弱者、惰性的な人間には。
感じさせるべきだ。それがいいのだ。
『眼 美しく怒れ』(岡本太郎 著、岡本敏子 編/チクマ秀版社)はじめにより。
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